小学校の頃、親にファミコンのカセットを買いに行ってもらったことが一度だけある。
リクエストしたのは、たしか「いっき」だったように記憶している。
今でこそクソゲーの評価を下されているタイトルだが、当時はそこそこ人気のソフトだった。
「なかったから代わりに買ってきた」
帰宅するなり親父が言う。
その手には「スパイVSスパイ」が握られていた。
百姓とスパイ。竹やりとトラップ。両者間に共通項を探すほうが難しい。
内心「これじゃねえよ……」とぼやいたが、幼少時における親父の権威はブルジュ・ドバイに匹敵するほど高い。
蜂起する気力など微塵も起きず、おとなしく「スパイVSスパイ」のカートリッジをファミコン本体に差し込むより他なかったのである。
その後「スパイVSスパイ」の全マップを頭の中に収め、対戦では常勝無敗になるまでやりこんだのだが、それはともかく。
この「欲しかったのはこれじゃないよファック」というほろ苦い思いは、誰しもかみ締めた経験があることだろう(ちなみに俺はその後、ファミコンのカセットを親に注文することは一度もなかった)。
親におもちゃを頼んだときからじわじわと上がる嬉しさのボルテージは、親が「ただいまー、買って来たぞー」と帰宅したときに頂点に達する。それが、包みを開けた瞬間、まるでエベレストの頂上からマリアナ海溝の最深部に叩き落されたような絶望感に変容するのだ。
このときの落差の大きさがおもちゃの人気にの高さに比例するという法則は、スティーヴン・バーシック博士が八~十歳の少年を対象にして行った臨床実験によって確立されている。もちろんデタラメだが。
しかし世の中は広い。
この「欲しかったのはこれじゃない!」をコンセプトにした玩具が存在するのである。
それが、ザリガニワークスの「
コレジャナイロボ」なのである。

「欲しかったのはこれじゃなーい!!」プレゼントを開けた子供から発せられる悲痛の叫び。楽しいはずのクリスマスが突如、修羅場に。こんな経験ありますか?できれば避けたいものです。しかし人生、欲しい物が何のリスクもなしに手に入るなんて話はそうはありません。欲しい物を手に入れる為には努力も必要だという事を何らかの機会に知っておくのも良いでしょう。
「コレジャナイロボ」はその絶妙な偽物感、カッコ悪さにより、その事をお子さまにトラウマ級の効果をもってお伝えする事でしょう。
情操教育玩具として是非お試しください。
��以上、オフィシャルwebサイトからの抜粋)
なんか尤もらしいボディコピーが書き連ねてあるけど、恐らくは
「なんかパチモンくさい商品を作りたかったから作ってみた」
てのが本音だろう。
しかし、一時期は3ヶ月待ちのバックオーダーがあったというから見事というより他ない。
ちなみにこの商品、ハンドメイド版は木製、量産版はソフビ製である。ダイカストやプラスティックを使わないあたりに、こだわりを感じる。
つうかこの商品のキャッチコピーは「欲しかったのはこれじゃなーい!!」なのだが、ゴメン、普通に欲しいわコレ。
商品全体から漂うパチモン臭がたまらん。
まあ、買い集めても後の処理に困るけど、シルバーのドクロリングとかは普通にアクセとして欲しい。
これを買って親戚の子供に配る……のは、周りの視線が痛そうだからやめとくか。